呼吸器内科とはabout respiratory
呼吸器内科は肺の病気を専門とする内科です。
健康な時には特に意識せずに呼吸をしていますが、肺の調子が悪くなると咳、痰、息切れなどの症状を起こし、日常生活に大きな支障をきたします。
感染症や癌、肺気腫、リウマチ肺など様々な病気を発症し、重篤になると命にかかわることもあります。そのため早期発見、早期治療、定期的な診察が必要となります。
このような症状の方はご相談ください
- 発熱、咳、痰がみられるようになった。
- 夜ゼーゼーして眠れない。
- ここ最近歩けていた坂道が休みながら出なければ登れなくなった。
- 乾いた咳が1か月以上つづいている。
- 体重が急速に減ってきた。
感染性疾患についてinfectious disease
感染性疾患とは細菌やウイルス、かびなどの病原菌によって引き起こされる病気のことをいいます。
インフルエンザウイルス、コロナウイルス感染症などのウイルス性疾患、肺炎球菌やインフルエンザ菌による肺炎、大腸菌による尿路感染など全身のさまざまな臓器にばい菌がついて炎症を起こすことで熱が出たり、痛みが出たりします。
原因となる菌を同定して、その菌に対して効果のある抗菌薬で治療します。
呼吸器疾患respiratory disease
肺炎、気管支炎
肺炎は2021年の厚労省の統計では悪性腫瘍、心疾患、老衰、脳血管疾患についで日本人の死因の第5位となっており、約7万人の方が亡くなられる重要な疾患です。
老衰のなかにも肺炎を契機に状態が悪化して亡くなられている方も多くいらっしゃいます。
主に細菌やウイルスが気管支や肺に感染して炎症を起こす病気です。
症状
はじめは、熱、せき、痰、鼻水、のどの痛みなどの風邪のような症状がみられます。
菌の種類によってはたんがあまりでず、空咳がひどいタイプのものもあります。
しかし、高齢の方や糖尿病があったりすると自覚症状があまりなく、なんとなく調子がおかしい、元気がない、話しかけても反応があまりないなどの症状でみつかることもありますので注意が必要です。
ひどくなるとじっとしていても息がしづらくなったり、胸の痛みがでてきたり、食欲がなくなったり、だるくて動けなくなったりすることがあります。
原因
空気中や口の中にいる細菌が肺に入って炎症を起こします。
ごはんや水分を飲んでむせるようなことが頻繁にある場合、食べ物や口の中の菌が肺の中に入り込み肺炎を引き起こします。
また、もともと肺に肺気腫や気管支拡張症などの病気がある場合には、こわれた気管支や肺に菌がすでに定着していることもあり、
体力が落ちたり、体に負担がかかったりすると、これらの菌が悪さをして炎症を起こします。
免疫を抑える治療をしていたり、癌などの病気のために、ご飯が食べられなくて弱ったりしているときには重症化し、命にかかわる場合があります。
診断
胸部X線写真、胸部CTで肺炎の広がりや分布の特徴からどのような原因による肺炎かを推定します。
また、血液検査で白血球数やCRPといった炎症の数値や重症度を確認します。
痰やおしっこの検査で原因となる菌が推定できることもあります。
鼻やのどのぬぐい液を遺伝子検査に提出することでウイルスなど培養で検出しづらい病原体を同定できることがあります。
治療
細菌による肺炎の場合には痰をだして肺にたまった菌の量をへらすこと、栄養をつけて全身状態を改善することが第一です。それでも改善しない場合には細菌をやっつける抗菌薬での治療が必要となります。
抗菌薬は菌の種類によってもっとも効果がある薬が異なりますので、治療をする前に痰の中にいる菌を同定することで早期改善が期待できます。
抗菌薬は飲み薬と点滴による注射剤があります。
飲み薬も1日1回でよいものから1日4回に分けて飲んだ方が効果が良い薬があります。
量を減らして飲んだり、のんだりのまなかったりすると菌を完全にやっつけることができず、薬が効かない耐性菌をつくってしまいますので処方されたお薬はきちんと決まった回数、決まった量を必ず内服することが大事です。
酸素が少ないことによる息切れやごはんがたべられない、飲み薬では改善に時間がかかるような重症な場合では、入院し点滴での抗菌薬投与治療が必要になることがあります。
運動、食生活を改善し、規則正しい生活を送ることが大事です。
糖尿病などの基礎疾患がある場合は、もとの病気を悪くしないようにきちんと治療しましょう。
また、風邪をきっかけとして肺炎が悪化することもありますので、うがい、手洗い、マスクの着用などの感染対策も有効です。
感染予防の一環としてワクチンの接種も積極的に受けることが望ましいと考えます。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスに対するワクチン接種も特に病気がある方には重要です。
65歳以上では肺炎球菌という菌による肺炎の数が増加するため、肺炎球菌ワクチンを接種しましょう(初回は公費負担があります)。
ただし、5年くらいで効果が切れてくるために5年に1回の接種が推奨されています。
肺結核、非結核性抗酸菌症
結核は2020年に5,000人を超える新規発症者が見られており、いまだに世界中で蔓延している重大な感染症です。
結核菌は抗酸菌という種類に分類され、人から人にうつる危険性があるため、隔離して治療することが必要になる場合があります。
結核菌以外の抗酸菌(非結核性抗酸菌)はヒトからヒトには感染しませんが、これも肺に感染して慢性的に炎症を起こします。
症状
結核菌は増殖分裂の速度がおそく、1個の菌が2個になるには15時間かかるといわれています。
症状も通常の肺炎とは異なり、2週間以上せきやたん、微熱がつづいたり、進行してくると体重が減ってやせてきたり、たんに血が混じったり、歩いたときに息切れするなどといった症状がみられるようになります。
無症状で検診を受けた時に偶然レントゲンの異常を指摘されることもあります。
非結核性抗酸菌症も同様の症状を起こします。
原因
通常は一緒に生活していた方が結核を発症し、咳こんで空気中にまき散らされた数ミクロン(1ミリの1,000分の1くらい)の飛沫核と呼ばれる状態の菌を吸うことで肺に菌が入ります。
気管支の自浄作用や免疫の影響で菌が肺に入ることを防ぐことができれば感染は問題はありませんが、肺に入って免疫の力で抑え込まれて肺の周りのリンパ節の中で冬眠状態で生き残ることがあります。
免疫の力で菌を抑えられている状態であれば発症することはありませんが、年をとったり、免疫力が落ちたりして、結核菌を抑える力が弱まると、約1割の方で菌が入って数年から数十年後に結核菌が暴れだして炎症を起こします。
全身に広がると肺以外にも首や胸、おなかのリンパ節、胸膜、心膜、腸、骨関節、脳、腎臓、皮膚などにも病変がみられることがあります。
非結核性抗酸菌であるマック菌は水回りや土壌などの湿った場所に多く生息し、それが乾いたときに空気中にまって吸い込むことで肺に定着します。そのため、ヒトからヒトには感染しません。
肺に定着してもほとんど悪さをしなかったり、悪化する場合も数年から数十年の経過で進行します。
診断
結核菌や非結核性抗酸菌を証明することが原則です。
つばの中には菌がいないため、肺の奥の方から出てきた痰を検査し、1回でも結核菌が出れば肺結核と診断されます。
非結核性抗酸菌は他の菌にまぎれて気道に定着していることもあり、2回以上検出されなければ診断に至りません。
痰の中に菌がみられなくても培養すると菌が生えてくることもあり、経過観察が必要です。
痰が出ない場合でもレントゲンやCTで肺結核や非結核性抗酸菌症が疑われれば気管支内視鏡検査を行い、陰影のある部分の検体を採取することで診断をつけられることができます。
治療
原則的には飲み薬での治療となります。
結核菌も非結核性抗酸菌も1種類の薬で治療するとすぐに効果が弱くなるため、複数の薬を組み合わせて治療します。
結核に関しては6か月から9か月間飲み薬の治療を行います(感染力があると判断された場合には専門の機関で感染のリスクが少なくなるまで入院加療を行います)。
非結核性抗酸菌症も同様に長期間にわたって飲み薬で治療しますが、結核の薬とは少し種類が異なります。
ただ、結核菌よりも薬が効きにくいので長い期間飲む必要があります。
通常は痰の中から菌が検出されなくなってから少なくとも1年は薬を続ける必要があります。
間質性肺炎
呼吸をすると肺で酸素と二酸化炭素の交換が行われますが、このガス交換を行っている肺胞という袋やその上皮細胞を実質、一方、その肺胞の壁や周囲の支持組織などを間質といいます。
その間質の部分に炎症を起こし、壁が厚くなって酸素の取り込みが悪くなってしまう病気です。
症状
軽症の場合にはほとんど症状がありません。
通常は比較的ゆっくり進行していくので、年をとったせいだと思ってそのまま様子を見られている場合もあります。
ただ、進行してくると痰があまり出ない空咳がでるようになったり、坂道や階段を上ると息切れするようになります。
まれに、インフルエンザなどの風邪をきっかけに急速に進行し、数日で肺が真っ白になってしまう場合もあります(急性増悪といいます)。
原因
間質性肺炎の中には原因の明らかなものと原因が不明なものがあります。
原因の明らかなものとしては関節リウマチなどに伴う膠原病肺、生活環境中のほこり・カビ・洗っていない加湿器を使い続けることでおこる塵肺や過敏性肺炎、薬やサプリメントなどのアレルギーで起こる薬剤性肺炎などがあります。
原因が不明なものの中で最も頻度が多い特発性肺線維症は未知の原因による肺胞上皮細胞(肺胞壁の構成細胞)の繰り返す損傷とその修復・治癒過程の異常が主たる病因・病態とされています。
診断
胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査を行います。
また、呼吸機能検査、動脈血液ガス分析や運動時の酸素飽和度測定により、病気の状態・進行具合の評価を行います。
気管支内視鏡検査で肺の一部分を生検して組織を検査することでより詳しい情報を得ることができます。
治療
原因が不明である間質性肺炎の多くは薬で完全に良くすることはむずかしいと考えられます。
ただ、原因のある間質性肺炎では原因となっている抗原の回避したり(アレルギーの原因となっている物質を吸わない、原因薬剤をやめるなど)、副腎皮質ステロイドで治療をすることで改善が期待できるものもあります。
特発性肺線維症では副腎皮質ステロイドの効果が不十分であるといわれており、抗線維化薬という薬で肺病変の進行する速度をおそくすることが期待できます。
肺がん
2018年に新たに診断された癌は約100万例ですが、発生部位別にみると男性は前立腺、女性は乳房が第1位で、肺がんは全体としては3位(男性4位、女性3位)と報告されています。
一方で2020年に癌で死亡された方は約38万人で、
肺がんは全体としては1位(男性1位、女性2位)であり、肺がんは非常に予後の悪い疾患です。
近年検診を早期から受けられる方もふえてきており、40代でも男性の10%、女性では5%の頻度で肺がんがみつかるようになっています。
症状
咳、痰(血痰を含む)、息切れ、体重減少、発熱、倦怠感などがみられることがあります。
また、肺以外の症状で発見される場合もあります。たとえば、腰が痛くて整形外科に受診し、骨への転移が見つかって肺がんがみつかったり、ふらつき、麻痺の症状で脳梗塞だと思ったら肺がんが脳に転移したりして見つかる場合もあります。
特に症状がなくても検診で肺に異常陰影を指摘されて見つかる場合もあります。
原因
肺がんの原因としてもっとも有名なものはたばこです。
タバコは吸っている人は吸っていない人と比較して男性で4.4倍、女性では2.8倍肺がんになりやすく、吸っているたばこの本数が多いほど肺がんになる危険性が高くなります。
自分が吸わなくても周りにタバコを吸う人がいるとそれでも肺がんのリスクが上がりますので、タバコを吸っていなくても定期的な検診が必要です。
診断・治療
検診や症状で受診されると、問診、診察、血液検査、レントゲン、CTなどの画像検査を行います。
各種検査結果から肺がんが強く疑われれば、診断目的で気管支内視鏡検査を行います(総合病院に紹介させていただきます)。
また、癌だった場合に肺以外の部位に病変がないか、PET-CT、頭部MRIの検査を行い、組織診断と病期診断を行います。
治療は組織と病期によって異なります。
早期はI期で他臓器に転移性病変が見られればⅣ期になります。
早期であれば手術、放射線、進行してくると抗がん剤による化学療法が主体となります。
慢性呼吸不全
呼吸不全とは体の中の酸素が足りないために日常生活に支障が生じる状態で、
具体的にはパルスオキシメーターで90%を下回る状態で、それが1か月以上つづくものを慢性呼吸不全といいます。
呼吸不全の中には二酸化炭素の量には問題のないI型呼吸不全と、二酸化炭素が吐き出せずに体の中にたまってしまうⅡ型呼吸不全があります。
症状
じっとしているときには特に症状がなくても、動いたり坂道をのぼったりすると息切れがしたり、途中で休憩しないと登り切れないといった症状が出るようになります。
進行してくるとじっとしているときにも苦しくて動けないといった症状がでてきます。
体の中に二酸化炭素がたまって体のバランスが崩れてくると頭が痛くなったり、ボーっとして意識が朦朧とすることがあります。
原因
肺の機能不全による低酸素血症の場合と呼吸の運動に問題のある換気不全による場合があります。低酸素血症をきたす疾患としては肺胞低換気や拡散障害を呈するCOPD、間質性肺炎、肺炎や肺結核のあとが残っている場合や換気血流不均等を呈する心不全や肺梗塞などがあります。
換気不全の原因としては肥満やおなかに水が溜まって横隔膜がうまく動かせない病気や脳梗塞、重症筋無力症などの神経筋疾患でもみられます。
診断・治療
動脈の血液で検査した酸素の量と二酸化炭素の量をみて診断します。
もともとの病気の治療を行うことが原則ですが、それでは改善しない場合には酸素吸入が必要となります。酸素の必要量はじっとしているときと動く時で異なるために、リハビリでそれぞれ適切な量の設定が必要です。
酸素の量は多すぎても少なすぎても逆に体調が悪くなりますので、医師が設定した量を自分の判断で調整しないようにしましょう。
二酸化炭素がたまるタイプの呼吸不全では二酸化炭素を体の外に出すのを補助するマスクの換気が必要になることがあります。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPDとは、いわゆる“たばこ肺”です。
タバコなどの有害物質を長期に吸い続けることで肺におこる炎症性疾患で、以前は慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれていました。
喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。
長期にわたって気管支がせまくなっている状態で、動いた後に苦しくなったり、咳や痰などの症状がみられるのが特徴です。
喘息(ぜんそく)
正式には気管支喘息といいます。気管支という空気の通り道がせまくなって、息を吸いづらくなったり、ゼーゼーしたりします。 気管支が常に炎症をおこしている状態であり、発作を起こしていなくても定期的な治療が必要です。
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